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勇者「ドーナツの世界?!」 第7話

322 以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/26(土) 21:00:49 ID:BBm.kHXg
第7話 幸せはどこにある
~南の都・図書館~
この街に来て、二日目の朝。
私は僧侶さんと図書館に行き、勉強をすることにした。
さすがに魔術の研究が盛んな都なだけあって、魔術書がとても充実している。


僧侶「魔法使いちゃんは何を読んでるの?」

魔法使い「宿から持ってきた魔法医学の本です。予定しているところまで読んだら、物理学や精霊魔術の研究論文にも目を通すつもりです」

僧侶「そうなんだ。魔法医学のことは何でも聞いてね」

魔法使い「はい。僧侶さんは何を借りてきたんですか?」

僧侶「転移魔法の入門書。これはここで目を通して、研究論文は書店で買う予定かな」

魔法使い「本当に転移魔法を勉強するんですね」

僧侶「まあね。人はなぜ、魔法を使うことが出来るのか――。私はどうしてもそれを知りたいの」

魔法使い「何だか僧侶さんらしいです。私も勉強、頑張らないと!」


323
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/26(土) 21:10:07 ID:BBm.kHXg
それから約1時間が過ぎ、予定していた課題が終わったので休憩をすることにした。
魔法医学の本を閉じ、気分転換に背筋を伸ばす。
するとそれを待っていたかのように、僧侶さんが話しかけてきた。


僧侶「魔法使いちゃん、これを見てみて」

魔法使い「何ですか?」

僧侶「絵のパズル、だまし絵だよ」

魔法使い「これはエッシャーの滝ですよね。こっちは階段ですか? それくらいなら、私も見たことがありますよ」

僧侶「これを実際に作ってみた研究者がいるんだって」

魔法使い「えっ……、あり得ないでしょ」

僧侶「ほらっ」


図を見てみると、確かに無限に続く階段が掲載されていた。
しかし別の角度だと、無限に続くと思われていた階段は離れていて、一段一段の形もいびつだった。


魔法使い「うわぁ、すごいです! 一見すると不可能なことでも、視点を変えれば再現することが出来るんですね」


324
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/26(土) 21:13:20 ID:BBm.kHXg
僧侶「今度は逆さ絵だよ」

魔法使い「変わった帽子を被った貴族の絵ですね」

僧侶「その絵を逆さまにすると、馬の絵になるの」

魔法使い「面白いけど、それが転移魔法とどんな関係があるんですか? メビウスの輪やクラインの壷のほうが、ベースになっていそうな気がするんだけど――」

僧侶「認識や錯覚の仕組みを考えて、世界を柔軟に捉えるという意図があるみたい。魔法医学の分野でも、脳の構造を学ぶに当たって興味深いテーマなんだよ」

魔法使い「それで私に見せてくれていたんですね」

僧侶「えっ、もしかして遊んでいると思ってたの?」

魔法使い「そんなつもりで言った訳じゃないです」アセアセ


325
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/26(土) 22:03:31 ID:BBm.kHXg
僧侶「じゃあ、最後に面白い隠し絵を見せてあげるね。何に見える?」


そのだまし絵には、裸で愛し合う男女の姿が描かれていた。
そして、私は昨日の出来事を思い出した。


魔法使い「何に見えるって……裸で愛し合う男女の姿ですよね//」

僧侶「ふふっ。魔法使いちゃんは、昨日からエッチなことばっかり考えているもんね。それにしか見えないよね」

魔法使い「むうっ……、私はエッチじゃないです」

僧侶「拗ねる魔法使いちゃん、すごくかわいい//」

魔法使い「もしかして、昨日の勇者さまと僧侶さんを連想させるために、わざとこれを選んで私に見せたんですか?」

僧侶「……そうだよ。私は勇者さまを好きになってしまったの。だから今、魔法使いちゃんの気持ちと向き合いたいと思ってる」

魔法使い「やっぱり、そうなんですね……」


326
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/26(土) 23:23:00 ID:BBm.kHXg
僧侶「魔法使いちゃんは、勇者さまのことをどう思っているの?」

魔法使い「そ、それは……」

僧侶「それは、何?」

魔法使い「……ぃぃんです」

僧侶「えっ?」

魔法使い「僧侶さんが勇者さまを好きなら、それで良いんです……」

僧侶「それで良いの?」

魔法使い「だって、勇者さまはいつも僧侶さんを見てるから……。どんなに頑張っても、私はまだ子供だから恋愛対象じゃないんです。昨日、そのことを思い知りました」

僧侶「そっか……」

魔法使い「でも私だって、もうすぐ結婚出来る歳だもん。僧侶さんが告白しないなら、私が誘惑しちゃいますから!」

僧侶「今言ったこと、後悔しないでね」

魔法使い「わ、分かっています。上手く行くと良いですね」


328
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/26(土) 23:39:00 ID:BBm.kHXg
僧侶「ところで、イルカは見つかった?」

魔法使い「イルカですか?」


唐突に話が変わって、私は戸惑った。
イルカとは何のことだろう。


僧侶「この隠し絵にはイルカが描かれているんだよ」

魔法使い「どこにも描かれていないですけど」

僧侶「そんなことないよ。ほらほら、邪念を払って。イルカは何頭いるかなぁ」

魔法使い「駄目です、見つけられません」

僧侶「やっぱり、魔法使いちゃんはエッチだね」クスクス

魔法使い「うぅっ//」


それからしばらく探してみたけど、結局イルカを見つけることが出来なかった。
それは裸で愛し合う男女の姿に強い感情を抱いているからかもしれない。
だから、私にはそれ以外のものが見えないのだろう。


329
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/26(土) 23:44:48 ID:BBm.kHXg
~部屋~
図書館に入り浸り、買い物を済ませて帰ってくると夕方になっていた。
たくさんの論文を読むことが出来て、今日はとても充実した一日だった。


魔法使い「勇者さま、ただいま~」

僧侶「ただいま戻りました」

勇者「おかえり」

僧侶「勇者さま、王様の話はいかがでしたか?」

勇者「それはあとで話すよ。いつも頑張ってくれているお礼に、今日は二人にプレゼントがあるんだ」

魔法使い「プレゼントですか?!」

僧侶「すごくうれしいです!」

勇者「これが魔法使いちゃんで、こっちが僧侶さん」

魔法使い「ありがとうございます。開けても良いですか?」

勇者「開けてもいいよ」


330
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/26(土) 23:59:58 ID:BBm.kHXg
魔法使い「え、エメラルドのネックレスだ!」

勇者「エメラルドには魔力を宿す力があるって聞いたから、魔法使いちゃんにちょうど良いかなって。この先は何があるか分からないし、魔力が空っぽになるリスクを減らせるだろ」

魔法使い「はい、ありがとうございます。エメラルドには魔力を増幅する力もあって、ずっと欲しいと思っていたんです」


そう言うと、私はさっそくネックレスを着けてみた。
大粒のエメラルドが淡く輝き、ローブの襟元で気品を漂わせている。


魔法使い「あの……、似合いますか?」

勇者「すごくかわいいよ」

魔法使い「えへへ、大切に使いますね//」


331
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/27(日) 00:37:05 ID:N4qM2o.I
僧侶「あの、勇者さま。私のプレゼントですけど、この指輪はどう解釈したら良いのですか?」


その言葉を聞いて僧侶さんの手を見ると、右手の薬指にミスリルの指輪が嵌められていた。
シックなデザインで、大人っぽい感じがする。


勇者「僧侶さんはパズル好きだし、パズルリングなら喜ぶかなって。ミスリル製だし、装飾品として遜色しないと思うよ」

僧侶「ありがとうございます。これを選ぶとき、何か言われませんでしたか?」

勇者「いや、別に」

僧侶「そうなんですね……」

魔法使い「そ、それじゃあ、夕食の前にお風呂に入りませんか。勇者さまにお礼をしたいです//」

僧侶「では、勇者さま。みんなで一緒に入りましょうか」

勇者「そう言えば、一緒に入ることになっていたっけ」

魔法使い「そうですよ。早く入りましょう//」


336
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/27(日) 21:51:05 ID:N4qM2o.I
~露天風呂・混浴~
僧侶「魔法使いちゃん、今日もいい?」

魔法使い「……はい」


そう答え、僧侶さんに身体を預けた。
そして、風精霊で風を起こすことにした。


僧侶「ふうん、なるほど――」

勇者「僧侶さん。昨日もやってたけど、それって何の研究をしてるの?」

僧侶「天使がしていた封印魔法の研究です」

勇者「そうなんだ。もしそれが出来るようになれば、僧侶さんは歴史に名を残すことになるな」

僧侶「そうですかねえ。私としては、やりたいことをしているだけなんですけど」

勇者「やりたいこと……か」


338
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/27(日) 23:08:53 ID:N4qM2o.I
僧侶「そう言えば、勇者さまも魔法を使えましたよね」

勇者「まあ、少しくらいなら」

僧侶「確か、精霊魔法と電撃魔法ですよね。性差があるのか確認したいので、ぜひ見させてほしいです」

勇者「でも剣術に特化させているから、魔法使いちゃんみたいに使いこなせないよ」

僧侶「それでも大丈夫です。じゃあ、抱き寄せるので何か見せてください」


僧侶さんはそう言うと、勇者さまの後ろに回って抱き寄せた。
すると豊満な胸が背中に当たったのか、勇者さまがうれしそうな表情になった。
その様子に、私は小さく溜息をついた。


勇者「……// じゃあ、疾風斬り!」パシュッ

僧侶「やっぱり、剣がないと本調子にはならないんですか?」

勇者「だから言っただろ、剣術に特化させているって」

僧侶「そうなんですね。ただ魔法の発動に関しては、男女の性差はないみたいです。ありがとうございました」


339
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/27(日) 23:37:12 ID:N4qM2o.I
勇者「ところで、王様の話だけど……。極南の地が闇に覆われているという話は、どうやら本当みたいなんだ」

僧侶「やっぱり、噂ではなかったのですね」

勇者「ああ。単なる噂なら、天使が現れたりする訳がないからな」

僧侶「そうですよね」

魔法使い「でも今は白夜なのに、どうして闇に覆われているんですか?」

勇者「そのことなんだけど、闇には結界が張られているらしいんだ」

魔法使い「結界?!」

勇者「そう、その結界のせいで近付くことが出来なくて、この国でも手をこまねいているそうだ」


340
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/28(月) 00:03:31 ID:eb6T1Hg2
僧侶「結界で近付けないなら、私たちの調査も終わりですね……」

勇者「いや、そうじゃない。女神の神託があった者とそれが選んだ者だけは、結界の中に入れるみたいなんだ」

僧侶「女神の加護があるのは勇者さまで、選んだ者は私と魔法使いちゃんですね」

魔法使い「天使さんの言葉と符合します」

勇者「ただ、一つ問題があって……。結界の中に入って帰ってきた者は、数人しかいないらしい」

魔法使い「えっ?! それってつまり、生きて帰ることが出来ないということなんですか」

僧侶「だから、情報が集まらないのですね」

勇者「恐らくな……」


341
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/28(月) 00:09:31 ID:eb6T1Hg2
魔法使い「私たちは天使さんに期待されていますよね。だから、帰るわけにはいかないですよね」

僧侶「そうだね。それが女神の意思でもある以上、魔法使いちゃんも行かなければならないと思う」

魔法使い「ですよねえ――」

勇者「確かに危険かもしれないけど、いざとなれば転移の羽があるし、魔法使いちゃんだけは絶対に守ってあげられるから。それでもし俺たちの身に何かがあったときは、転移の羽を使って王様に真実を伝えてほしいんだ」

魔法使い「……分かりました」

勇者「それじゃあ、結界内では何が起きるか分からないから、二人とも自衛策を講じておいてくれ」

僧侶「では、回復用の装身具を多めに作っておきます」

勇者「そうしておいてくれると助かるよ。魔法使いちゃんも、魔道具はいつでも使えるようにしておいてね」

魔法使い「はい」


342
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/28(月) 00:24:39 ID:eb6T1Hg2
勇者「それで明日の予定なんだけど、王様が魔法使いちゃんに会いたいそうなんだ」

魔法使い「ええっ! 私にですか?!」

勇者「この国は魔術の研究が盛んだろ。だから天使と戦闘経験がある魔法使いちゃんに、その実力を見せてほしいんだって」

魔法使い「戦闘経験って言われても、ほとんど一方的に攻撃されただけですよ」

勇者「そんな事ないよ。この世界に天使と対峙した魔道師は、魔法使いちゃんだけしかいないんだから。それは偉大なことだと思う」

僧侶「そうですよ、すごいことです! 他国の王様が会いたいとおっしゃるなんて、魔法使いちゃんはもう有名人だね」

魔法使い「そ、そうですかねえ……」

勇者「まあそういう訳だから、明日、一緒にお城に行こうか」

魔法使い「わ、分かりました!」

僧侶「魔法使いちゃん、頑張ってね」


344
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/28(月) 22:26:19 ID:eb6T1Hg2
~部屋・深夜~
深夜になり、僧侶は魔法使いが寝ていることを確認してベッドに腰を掛けた。
そして、隣で寝ている勇者に声をかけた。


僧侶「勇者さま、起きていますか?」

勇者「ん? あぁ、まだ起きているけど」

僧侶「今、二人で話を出来ますか」

勇者「別にいいけど、どんなこと?」


勇者はそう言いつつ、身体を起こした。
そして、僧侶と向かい合う。


僧侶「今日くださった、この指輪のことです。本当に装飾品以上の意味はないのですか」

勇者「そうだけど、寝るときも着けてくれているんだ」

僧侶「あの……、これは浮気防止用のリングなんです。つまり、いわゆる結婚指輪でもあるんです」


345
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/28(月) 22:33:06 ID:eb6T1Hg2
勇者「えっ、これが結婚指輪?!」

僧侶「この指輪は指から外すと、簡単にバラバラになってしまいます。だから、婦人は指輪を外すことが出来ません。そのため、出兵などで長期間の旅に出る殿方が妻に贈るのです」

勇者「宝石店ではアクセサリーとして売っていたんだけど……」

僧侶「魔法使いちゃんには魔道具だったのに、どうして私には普通の指輪なんですか」

勇者「それは僧侶さんに喜んでもらいたかったから――。パズルリングなら、僧侶さんの笑顔を見られると思ったからプレゼントしたんだ」

僧侶「私の笑顔?」

勇者「そう、俺は僧侶さんのことが好きだ」


僧侶は胸がきゅんと締め付けられ、あまい表情で勇者を見詰めた。
魔法使いと話し合って彼女が身を引いてくれたので、もう自分の気持ちを誤魔化す必要はない。
だけど、聞かなければならない。
そして、本当のことを言わなければならない――。


350
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/28(月) 22:35:11 ID:eb6T1Hg2
僧侶「勇者さま、ずっと聞きたいことがありました」

勇者「聞きたいこと?」

僧侶「エルグの城で仲間を選ぶとき、勇者さまは女僧侶だけを指名して、戦士や賢者の同行を断りましたよね。女性の身体が目当てで、御しやすい女僧侶を選んだのですか?」

勇者「それは……」

僧侶「答えてください。勇者さまは、私と交わりたいだけなのですか?」

勇者「ごめん、最初はそんな期待もしてた」

僧侶「やっぱり、そうなんですね」

勇者「だけど、すぐに別の気持ちに変わったんだ。魔法使いちゃんと姉妹みたいに楽しそうな姿を見ていたら、男として二人を守らないといけないなって」

勇者「それに僧侶さんは面倒見が良くて優しいし、旅を通じて食べることが好きな女性だと分かった。俺はそんな僧侶さんのことが好きなんだ」

僧侶「……」

勇者「僧侶さん、返事を聞かせてくれないかな」


346
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/28(月) 22:41:56 ID:eb6T1Hg2
僧侶「私も食べることが好きな勇者さまと気が合うし、一緒にいて楽しいです。それに魔法使いちゃんのことも守ってくれたし、勇者さまならずっと信頼して一緒にいられそうだなと思っています」

勇者「それって……」

僧侶「はい、私も勇者さまが好きです。だけど、本当のことを知れば好きにはなれないと思います」

勇者「本当のこと?」

僧侶「私が魔法使いちゃんの同行を許した本当の理由です」

勇者「何だ、そんなことか」

僧侶「もしかして、気付いていたんですか?!」

勇者「さっきの話を聞いて、ぴんと来た。でも、そんな気持ちで旅を続けるなんて出来はしないだろ。魔法使いちゃんは僧侶さんを慕っているし、その優しさは本当の気持ちなんだ」

僧侶「勇者さま……」

勇者「だから、俺の気持ちは変わらない」


347
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/28(月) 22:46:22 ID:eb6T1Hg2
僧侶「んっ……//」


二人は抱き締めあい、唇を重ねた。
舌を絡め、激しいキスをする。
そして、僧侶は勇者のベッドに腰を下ろした。
心がざわめき、次の展開を期待する。


僧侶「してもいいですよ//」

勇者「僧侶さん、気持ちはうれしいけど逃げてない?」

僧侶「逃げる……ですか?」

勇者「生きて帰れる保証がないから、その前にさせてあげようって」

僧侶「やっぱり、勇者さまは信頼出来る方ですね。でも私が聞きたいのは、そんな言葉じゃないんです。勇者さまが私とどうしたいのか、それを聞かせてほしいんです」

勇者「俺は僧侶さんのことが欲しい」

僧侶「うれしい……。初めてだから、優しくしてくださいね//」


355
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/29(火) 22:15:29 ID:FE2DHKq.
・・・
・・・・・・
思春期特有の性的な夢を見ていた。
それは性に目覚めた少女が見る、背伸びをした夢。
そんな夢の中で、私は勇者さまと向かい合っていた。

着ているローブを脱ぎ、照れながらブラジャーを外す。
そして程よく膨らんだ乳房が露になると、勇者さまに抱き締められた。
とろけるようなキスをされて、胸を揉まれる。
それがとても心地よくて、私はあまい吐息を漏らした。

やがて、勇者さまの陰茎が硬くなってきた。
それは膣口にあてがわれ、ゆっくりと挿入されてくる。
しかし、そこで夢のイメージが曖昧になってしまった。


「んくっ……ぅんっ……」


どこからか、艶めいた嬌声が聞こえた。
それは途切れることがなく、夢見心地だった曖昧な意識を覚醒させていく。
そして、僧侶さんのあえぎ声で目が覚めた。


356
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/29(火) 22:17:44 ID:FE2DHKq.
勇者さまのベッドから、いやらしい声が聞こえてくる。
その声に、私は身体と心がそわそわとしてきた。
我慢できなくなってちらりと見ると、勇者さまと僧侶さんが裸で絡み合っていた。

それは、さっきまで見ていた夢のようだった。
勇者さまが僧侶さんの乳首を吸いながら女性器を弄び、僧侶さんはリズミカルに勇者さまの陰茎を刺激している。
官能的な表情でお互いを愛撫し、高まっていく性感を楽しんでいる。

私はそんな二人の姿を見てはいけないと思った。
それなのに今まで経験したことのない感情が湧き起こり、二人から目を離すことが出来ない。


勇者「僧侶さん、もう入れて欲しいの?」

僧侶「は、はい……。勇者さまと一つになりたいです// 一応、これを着けてくださいね」

勇者「分かってるよ」

僧侶「こ、こんなに大きいのが入るんですよね。何だか、すごくドキドキしてきました//」


356
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/29(火) 22:17:44 ID:FE2DHKq.
勇者さまは勃起した陰茎にくるくると避妊具をかぶせた。
そして僧侶さんが両脚を広げると、勇者さまは女性器に陰部を近づけた。


勇者「僧侶さん、痛かったら言ってね」

僧侶「くっ、んんっ……」


僧侶さんの膣はすでにヌルヌルになっていて、膣口からあふれ出した分泌液が外性器を濡らしている。
そんな興奮状態の膣内に、硬くなった陰茎が挿入された。
亀頭が膣を押し広げ、ゆっくりと奥まで入っていく様子が手に取るようにして分かる。


勇者「はぁはぁ……、奥まで入ったよ」

僧侶「んっ……。一つになれてうれしい……です//」

勇者「俺も今、すごくうれしい。それじゃあ動くね」

僧侶「はうっ、ぁっ……あんっ……//」


357
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/29(火) 22:25:44 ID:FE2DHKq.
僧侶さんの膣壁がしっかりと陰茎を包み込み、勇者さまが腰を振るたびに二人の生殖器が擦れ合う。
その刺激で性的興奮が高まっていき、僧侶さんの子宮が腹部のほうに引き上げられた。
さらに膣の奥深くが膨らんで、射精された精液をためる準備が始まっている。

それらの性反応を見ていると心が苦しくなってきて、私は寝返りを打った。
それでも、二人から意識を外すことが出来ない。
そして、ついに勇者さまに射精反射が起きて精液がたくさん作られ始めた。


僧侶「ああっ……いぃ、はぅん…………」

勇者「僧侶さん、いきそうっ!」

僧侶「……んくぅっ……あああっ、あぅっ……うぅっ!!」

勇者「イクっ!」ドピュドピュッ

僧侶「んんっ……んぅっ…………//」


精液が放出されると、膣や周辺の括約筋が収縮を繰り返した。
その動きが勇者さまの快感をさらに高め、尿道に残っている精液を貪欲に絞り出している。
そして、子宮が収縮して僧侶さんは絶頂に達した。


358
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/29(火) 22:37:48 ID:FE2DHKq.
勇者「僧侶さん、大好きだよ」

僧侶「はあはあ……私も、です。勇者さま、いっぱい出ましたね//」

勇者「僧侶さんと一つになれて、ものすごく気持ちよかったから」

僧侶「ふふっ、何だか恥ずかしいです。でも、こうして勇者さまを感じられて、私はすごく幸せです//」


今まで聞いたことがない、あまく幸せそうな声。
僧侶さんのことは好きだから、その恋をその幸せを応援してあげたい。
しかし、昨日から押さえ込んでいた嫉妬心がふつふつと湧き上がってきた。

僧侶さんはこの部屋で交わって、私が起きるとは思わなかったのだろうか。
そして、性行為を見てしまうとは思わなかったのだろうか。
そのせいで、私は見たくないものを見てしまった。

私だって勇者さまのことが好きなのに……。
僧侶さんもそのことを知っているはずなのに――。
それなのに、どうして勇者さまと僧侶さんが淫らに性交する姿を見せ付けられないといけないの!?

涙が溢れ出し、妬みが膨らんでいく。
そして、そんな自分に嫌気がした。
僧侶さんの背中を押したのは私なのに、嫉妬するなんて間違っている。

私は爆発しそうな気持ちに無理やり蓋をして、窓の外を眺めた。
遮光カーテンは閉められておらず、南の空には左側が欠けた弓形の太陽が見えている。
それは自然現象なのか、今の自分の心のように光を失っていく。
やがて、太陽は完全に見えなくなった。


360
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/31(木) 20:22:22 ID:jv7QuFkY
勇者「僧侶さん。俺たちがこうして結ばれたのは、魔法使いちゃんがいてくれたからだと思うんだ。だから、彼女との絆はもっと大切にしないといけないと思う」

僧侶「……はい」

勇者「極南の地に行けば、生きて帰れないかもしれない。だけど、何があっても生きて帰ろう。今まで魔法使いちゃんを逃がす方法を考えていたけど、それだけじゃ駄目なんだ」

僧侶「そうですよね。魔法使いちゃんと話したいことが、まだまだたくさんあるんです。さくっと目的を済ませて、みんなで楽しく帰りましょう」

勇者「そうだな。それじゃあ、そろそろ寝ようか」

僧侶「おやすみなさい//」

勇者「おやすみ」

僧侶「魔法使いちゃん、今日は本当にありがとう。今度ちゃんと話すから、これからも一緒に旅をしようね。おやすみなさい」


その言葉に、私は困惑した。
しかし独り言だったらしく、僧侶さんの寝息が聞こえてきた。

二人は愛し合う関係になっても、私のことを大切に想ってくれている。
ならば私は、そんな二人に何をすれば良いのだろう。
やっぱり気持ちを押さえ込み、我慢するしかないのかもしれない。

窓の外を眺めると、再び弓形の太陽が現れてきた。
それは、先ほど見たときとは左右逆の形になっていた。


363
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/31(木) 21:59:50 ID:jv7QuFkY
~お城・翌日~
魔法使い「あ、あの、お城でどのようなことをするのでしょうか」

勇者「実力を見せて欲しいってことだから、簡単な模擬戦とか親善試合みたいなものじゃないかな」

魔法使い「し、試合をするんですか?!」

勇者「そうだろうと思う。栄誉あることだし、変に身構える必要はないんじゃないかな」

僧侶「そうそう、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ」ニコッ

魔法使い「は、はいっ」


お城への道すがら、私は二人の様子を観察した。
少し距離感が変わった気がするけれど、二人の態度はいつもと変わらない。
昨夜のことを意識しているのは、私だけのようだ。


勇者「門番さん、王様に謁見したく参りました」

門番「おお、エルグの国の勇者殿ですな。話は聞いております。中へお入りください」

勇者「それじゃあ、二人とも中に入ろうか」


364
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/10/31(木) 22:07:05 ID:jv7QuFkY
王様「勇者たちよ、よくぞ参った。さっそくだが、どなたが魔法使いなのじゃ」

魔法使い「わ、私です」

王様「おぉ、何とまだ少女ではないか! その歳で勇者一行として旅に出るとは、よほど優秀と見える。天使と戦ったと聞いたが、それは真か?」

魔法使い「は、はい。海の都の支援施設で訓練をすることになって、そこに現れた天使さんに指導してもらいました」

王様「なるほど。魔法使いよ、実はわが国の魔法兵団の兵長が、手合わせを願いたいと申しておるのだ。よもや年端も行かない少女だとは思っていなかったので断っても良いが、どうかな」

魔法使い「が、頑張ります!」

王様「おお、そうか。この男が兵長だ。良い試合を楽しみにしておるぞ」

兵長「俺が兵長だ、よろしく頼む。では、魔法使い殿。訓練施設に参ろうか」

魔法使い「お願いします」

僧侶「魔法使いちゃん、頑張ってね♪」

魔法使い「はいっ」


365
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/01(金) 21:33:09 ID:hqFMTWH2
~屋外訓練所~
兵長「ルールはどちらかが戦闘不能になるか、降参するまでの一本勝負だ。なお、相手を殺してしまった場合は負けとする」

魔法使い「じゃあ、手加減しないといけないんですね」

兵長「言うではないか。しかし、今回の趣旨は魔法使い殿の実力を見せてもらうことだ。全力で来てほしい」

魔法使い「分かりました。よろしくお願いします」

兵長「こちらこそ、いい試合をしよう」

魔法使い「はいっ」

王様「では、試合始め!」


366
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/01(金) 21:38:11 ID:hqFMTWH2
魔法使い「火精霊、風精霊召喚! 火炎魔法行きます!」

兵長「あ、青い炎だと!?」


私は精霊たちを制御し、天使さんが見せてくれた青い炎を作り出した。
そして、兵長さんに向けて火球を飛ばす。


兵長「水魔法!」


兵長さんが多量の水を生成し、猛烈な炎の消火を試みる。
しかし、火炎魔法の桁外れな熱量で水を瞬時に蒸発させた。


魔法使い「その程度では、私の魔法を消せはしません!」

兵長「くそっ、疾風魔法!」


兵長さんは風精霊の力を借りて右に飛び、炎を回避した。
そして、標的を失った炎はブロック壁に直撃して鉄扉を変形させた。


367
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/01(金) 21:44:43 ID:hqFMTWH2
兵長「おいおい、冗談だろ。あんなのまともに食らったら、一瞬で消し炭にされるじゃないか。しかし、その熱量は諸刃の剣だ!」

魔法使い「あつっ! えっ?!」


右腕が高温の何かに触れて、私は慌てて手を引いた。
しかし、そこには何もない。


魔法使い「まさか見えない炎?!」

兵長「そうではない。鉄扉を溶かすほどの火炎魔法で作られた、高温の水蒸気だ」

魔法使い「高温の水蒸気?」

兵長「なぜ、水魔法で消そうとしたか。直線的な攻撃だけが精霊魔法ではない!」


水精霊で防御しつつ、それを攻撃に転化する。
炎の魔法を火精霊で相殺することに慣れていたので、まったく思いつかなかった。
しかも、すでに囲まれているようだ。

常温の空気層と高温の水蒸気。
その境界面で光が屈折し、周囲が陽炎のように揺らめいている。
そして、沸点を遥かに超えた水蒸気が勢いよく迫ってきた。


368
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/01(金) 21:47:22 ID:hqFMTWH2
魔法使い「いやあぁぁっ!」

兵長「我慢するな。負けを認めろ」


高温の水蒸気が皮膚を蒸し焼きにしていく。
だけど、この程度で負けたりなんてしない!


魔法使い「ま、負けない……。凍結魔法、回復魔法!」


私は凍結魔法で水蒸気を冷却し、手足の熱傷を回復させた。
軽いものなら、容易に治すことが出来る。


兵長「魔法使い殿、まさか女賢者なのか?!」

魔法使い「はい。まだ見習いですけど」

兵長「見習いとはいえ、回復魔法を使えるとは素晴らしい。その歳で勇者一行の魔道師を務め、天使と一戦を交えたというのは伊達ではないということか」

魔法使い「ありがとうございます。では、勝たせてもらいます!」


369
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/01(金) 21:50:43 ID:hqFMTWH2
魔法使い「土精霊、水精霊召喚!」


土精霊で床を変形させて、兵長さんが動けないように足首を固定した。
そして凍結させた氷を融解し、呼吸が出来ないように兵長さんの顔を包み込んだ。
人間は息が出来なければ死んでしまう。
きっと天使さんならば、こんな方法で攻撃してくるだろう。


兵長「?! ゴボボボ、ゲホッ……」

魔法使い「どうですか? 自分が生成した水で窒息する気分は――」


もちろん殺すつもりはない。
だけど、これは試合だ。
どんなにもがいても、気絶するまで絶対に息はさせない。
そう思っていると、唐突に水が消滅した。


371
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/01(金) 22:02:09 ID:hqFMTWH2
兵長「ぜえぜえ……。まさか、転移魔法を使うことになるとはな――」

魔法使い「ええっ、転移魔法なんてずるいです!」

兵長「では、行くぞっ! 土精霊召喚!」


兵長さんは足首の拘束を解き、そのついでに石のこん棒を作り出した。
それを手にして、駆け出してきた。
このまま近接格闘に持ち込まれると、体術が苦手な私では圧倒的に不利になる。


魔法使い「爆発魔法!」


爆風が兵長さんを吹き飛ばす。
しかし、殺さないように手加減したことがあだとなった。


兵長「風精霊召喚、加速魔法!」


まさか爆風に乗っている?!
兵長さんは、私の魔法を何らかの形で攻撃に利用してくる。
そのおかげで精霊魔法は力技ばかりではなく、どのように使役するのか考えることが重要なんだなと、改めて実感させられた。
そしてそう思っている間に、兵長さんが猛スピードで迫ってきた。


373
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/01(金) 22:07:45 ID:hqFMTWH2
兵長「障壁魔法!!」

魔法使い「うぅっ……」


目の前に光のカーテンが現れ、視界を塞がれた。
さらに眩しいほどの光を放っているせいで、目がくらんで前が見えない。

意識を集中させると、風精霊と土精霊の魔力を感じた。
恐らく、そこに兵長さんがいるはずだ。
しかし、速すぎて捉えられない。

だったら、全体に攻撃すれば良い。
予測が困難な方法で――。


兵長「もらった!」

魔法使い「土精霊さん、頑張って!」


374
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/01(金) 22:13:37 ID:hqFMTWH2
どんなに速く動けても、地面は絶対に踏む。
ならば、その地面をすべて刃にしてしまえば良い。
私はそう思い、尖った槍の先端をイメージした。
そして魔力を振り絞り、一面に石槍を敷き詰めた。


兵長「ぐあぁぁっ!!」


石槍を踏んだのか、絶叫が聞こえた。
さらに、兵長さんは加速魔法を使っている。
だから踏みとどまることは出来ない。


兵長「――!!」


375
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/01(金) 22:22:14 ID:hqFMTWH2
私は視力が回復して、声が聞こえた方向を見た。
すると、足元に血塗れの兵長さんが倒れていた。


魔法使い「兵長さん! 回復魔法!」


出血は弱まったが、石槍がたくさん刺さっていて傷が塞がらない。
考えてみれば当たり前のことだけど、石槍を抜かないと回復できないようだ。


兵長「ぐっ……」

魔法使い「魔法解除。回復魔法!」

兵長「すまない。おかげで、かなり楽になった」

魔法使い「そうだ、試合!」

兵長「俺の負けだ。『綺麗な娘には棘がある』とは、よく言ったものだな。触ると痛かったよ」

魔法使い「ふふっ、兵長さんって面白いですね。それを言うなら、『綺麗なバラ』ですよ」

兵長「そうだったな、今日はありがとう。また来てくれたら、魔法使い殿を歓迎するよ」

魔法使い「はい♪ 今日は勉強になりました。ありがとうございました」


377
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/02(土) 21:23:24 ID:Q.W57bqY
~お城~
魔法使い「勇者さま、勝ちましたよ~!」

勇者「魔法使いちゃん、頑張ったね」

魔法使い「はいっ」

僧侶「私は完璧に回復魔法を使えたことに驚いたな。すごく心配したんだからね」

魔法使い「えへへ//」

王様「魔法使いよ、見事であった。兵長がとても高く評価しておったぞ。火炎魔法だが、あれは天使の技術なのか? あの鉄扉を溶かすとは、恐ろしい魔力だ」

魔法使い「ありがとうございます。火炎魔法は風精霊と併せて使うものだと教えてもらいました。壊してしまってすみません」

王様「よいよい。それ以上のものを見せてもらった。そなたに相応しい褒美を用意しよう」

魔法使い「ありがとうございます」

王様「大臣よ、占星術師を呼んで参れ」

大臣「かしこまりました」


378
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/02(土) 21:26:08 ID:Q.W57bqY
王様「占星術師よ、優秀な魔法使いに希望のある未来を」

占星術師「かしこまりました。それでは、彼女への褒美をわたくしにお預けください」

王様「うむっ」


占星術師さんは王様から化粧箱を受け取ると、私を見据えた。
その視線は、まるで心を見透かしているかのようだ。


占星術師「魔法使い殿、あなたは海の都で一度未来を見てもらっていますよね」

魔法使い「は、はいっ」

占星術師「あなたには闇が見える。そんなことを二度言われても、面白くはないでしょう。そこで一つ、余興をしようではありませんか」

魔法使い「余興ですか?」

占星術師「大臣さん、わたくしの占い道具をお願いします。それと、お仲間である勇者殿と僧侶殿は席を外していただけませんか」

大臣「それでは、お二人は別室に案内いたします」

勇者・僧侶「分かりました」


380
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/02(土) 21:34:37 ID:Q.W57bqY
占星術師「魔法使い殿、始めましょうか」


余興の準備が終わったらしく、ようやく声を掛けられた。
用意された台の上には、障壁魔法で作った半球が三つ並べて展開されている。
それはちょうど、お茶碗を反したくらいの大きさだ。


魔法使い「これは……?」

占星術師「障壁魔法を展開するときに、あなたへの褒美を中に入れておきました。三つの半球は、勇者殿ご一行と同じ数ですよね」

魔法使い「……はい」

占星術師「さしずめ、あなたから見て左から順番に、勇者殿と僧侶殿、魔法使い殿といったところでしょうか」

魔法使い「は、はい」

占星術師「では、どこに褒美が入っているのか、言ってみてください」


381
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/02(土) 21:39:25 ID:Q.W57bqY
魔法使い「勇者さまがリーダーなので、一番左を……」

占星術師「なるほど。実は、魔法使い殿を表す半球には褒美が入っていません」


そう言うと、一番右の障壁魔法が解除された。
台の上には、勇者さまと僧侶さんを表す半球が残されている。


占星術師「さて、あなたはもう一度選ぶチャンスがあります。今なら、違う半球を選んでも構いませんよ。どちらにしますか?」

魔法使い「!!」


382
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/02(土) 21:41:59 ID:Q.W57bqY
これはモンティ・ホール問題だ。
それならば、この確率は二分の一ではない。
僧侶さんの半球に変えたほうが、褒美を三分の二の確率で貰えることになる。
確率に従うならば、変えるべきだ。

しかし、これは占星術でもある。
私への褒美は、希望のある未来を表している。
それを手にすることが出来るのは、勇者さまか僧侶さんか――。


占星術師「あなたは勇者殿を選ぶのですね? それなら……」

魔法使い「いいえ、私は……僧侶さんを選びます!」


私は悩んだ末に、僧侶さんを選んだ。
二人が交わる姿を見せ付けられた後で、好きな人を奪った僧侶さんを選べるわけがない。
だけど勇者さまと僧侶さんは、私のことを大切に想ってくれている。
ならば、私はそれに応えたい。
僧侶さんの恋愛を応援してあげたい――。


383
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/02(土) 21:44:42 ID:Q.W57bqY
占星術師「分かりました。では、開放します」


その言葉と同時、僧侶さんを表す半球の障壁魔法が解除された。
すると、そこには賢者の石で作ったブレスレットが置かれていた。
希望のある未来は、僧侶さんを選ぶことで手にすることが出来るのだ。


占星術師「正解です。あなたへの褒美は賢者の石です」

魔法使い「ううっ……、やっぱりつらいです」

占星術師「先ほども言いましたが、あなたには闇が見えます。もうすぐ、それと向き合うことになるでしょう。今の選択はより絆を深め、あなた方に希望をもたらしてくれるはずです」

魔法使い「ありがとう……ございます…………」

占星術師「あなたには華がある。わたくしも、それを楽しみにしていますよ」


385
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/03(日) 10:23:19 ID:Iv5.g6BY
~部屋~
お城から戻って、私はぼんやりと時間を過ごした。
物思いに耽りながら、ちらちらと僧侶さんの様子を窺う。
僧侶さんはずっと転移魔法の書物を読んでいて、ときどき気晴らしにパズルで遊んでいるようだ。
それは勇者さまも同じで、さっきからずっと知恵の輪に取り組んでいる。

しかし二人とも、昨夜のことは一向に話してくれない。
もちろん、エッチなことをしたと報告して欲しいわけではない。
せめて、付き合うようになったことくらいは教えて欲しい。


僧侶「魔法使いちゃん、さっきからどうかしたの?」

魔法使い「いえ、何でもありません……」

僧侶「占星術師さんに何を言われたのか知らないけど、悩んでいることがあったら何でも言ってね。私も気持ちの整理が出来たら、魔法使いちゃんに話すから」

魔法使い「あっ……」


386
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/03(日) 10:30:39 ID:Iv5.g6BY
僧侶「やっぱり、悩みはそのことなのね」

魔法使い「……はい」

僧侶「昨日、私は勇者さまと好き合うようになりました」

魔法使い「やっと言ってくれましたね……」

僧侶「魔法使いちゃんに背中を押してもらって、そのおかげで――って、あれ?」

魔法使い「んっ……?」

僧侶「えっ、もしかして知ってたの!? まさか起きていた……とか?」

魔法使い「えっ、気付いてなかったの?」


387
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/03(日) 10:45:34 ID:Iv5.g6BY
僧侶「あわわ// い、いつから……」

魔法使い「恥ずかしくて言えないです」

僧侶「ひえぇっ……。も、もしかして見てた?」

魔法使い「少しだけ……」

僧侶「ま……まあ、私は勇者さまとそういう関係になったのです」

魔法使い「あの……、私も勇者さまが……す、好きなんです。だからその、私にも心の準備をさせてほしいです」

僧侶「うん。私も落ち着いたらちゃんと話すから、そのときは……」

魔法使い「……はい」


388
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/03(日) 10:48:01 ID:Iv5.g6BY
勇者「解けたーーーーーっ!!」

魔法使い「!!」ビクッ

僧侶「勇者さま、少しは空気を読んでくださいよ!」

勇者「えっ? これ見てよ、ついに外れたんだ!」

僧侶「ああっ、すごいじゃないですか! チリ人の輪が解けたんですね」

勇者「ふふん。勇者として、これくらいは解けないと示しが付かないだろ」

僧侶「戻せますか?」

勇者「ああ、それは簡単。このなが――」カチャカチャ

僧侶「わあぁぁっ! 見せないでください、言わないでください。私が解く楽しみがなくなるじゃないですか!」

勇者「――ほら、もう戻ったよ」カチャカチャ

僧侶「あっ、ほんとだ。勇者さまに解けるなら、私も負けてられないですよね」


389
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/03(日) 10:52:19 ID:Iv5.g6BY
勇者「魔法使いちゃん」

魔法使い「はい……」

勇者「俺は僧侶さんが好きなんだ。だから、魔法使いちゃんの気持ちには応えられない」

魔法使い「勇者さま……」

勇者「だけど俺のことを好きだという気持ちはうれしいし、これからも魔法使いちゃんと良い関係を築いていきたい。それは俺たちの関係が変わったとしても、絶対に変わらないと思うんだ」

魔法使い「出来れば、私もそうありたいです」

勇者「大丈夫だよ。この知恵の輪も、一度はバラバラになったけど元に戻っているだろ」

魔法使い「その知恵の輪は、やっぱり私たちの関係を表していたんですね」

僧侶「私たちの関係?」

魔法使い「……はい。二人が愛し合って、私は嫉妬しました。でも二人の愛を受け入れられたら、私はまた一緒にいられるんです」


390
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/03(日) 10:56:28 ID:Iv5.g6BY
僧侶「魔法使いちゃん、後悔してない?」

魔法使い「それは……」

僧侶「怒ってもいいよ。私は魔法使いちゃんの気持ちを知りつつ、勇者さまを奪ったんだから」

魔法使い「ううん、これで良いんです。私も僧侶さんの気持ちを知っていましたから……」

僧侶「勇者さま、少し早いけど一緒にお風呂に入りませんか? もちろん、魔法使いちゃんも一緒に」

勇者「そうだね……」

僧侶「私たちにとって大切な社交の場ですし、みんなで話せることから話し合いましょう。ねっ、魔法使いちゃん」

魔法使い「……はい」


きっと、これが正しいんだ。
失恋してしまったけど、すべての絆が壊れてしまったわけではない。
私は僧侶さんの気持ちを受け入れて、絆を大切にすることにした。


391
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/03(日) 11:04:46 ID:Iv5.g6BY
~北の街・エルグの城~
大臣「王様、報告があります」

王様「どんなことだ」

大臣「ただいま、極北の地より第一調査団が帰還しました」

王様「おお、ようやく戻ってきたか」

大臣「謁見を求めていますが、今はよろしいですか」

王様「ことは急ぐかもしれん。至急、調査結果を報告してもらおう」

大臣「承知しました」


392
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/03(日) 11:06:04 ID:Iv5.g6BY
~謁見の間~
団長「王様、ただいま帰還いたしました!」

王様「ご苦労であった。して、極北の地はどうであったか報告せよ」

団長「極北の地は、ただいま極夜でございます。しかしながら極地には結界が張られ、内部は光に満たされているようでした」

王様「なるほど。極南の地が闇ならば、極北の地は光というわけか」

団長「それで結界内に入ることを試みたのですが、入ることが出来ませんでした。結界の形状は巨大な半球であると推測され、接地面に切れ目はありません。そのため、内側がどうなっているのか未確認です」


極北の地には光の結界がある。
しかも、その中に入れないという状況は極南の地と酷似している。
もしかすると、光の結界を作った者は闇の結界を作った者と同一の存在かもしれない。


王様「極南は今、白夜であったな。もしかすると、そこの光が集められているのかもしれん」

大臣「まさか、白夜の光を集めているとは……」

王様「そのような事態も推測できるということだ。団長よ、現地にて何か感じられなかったか?」


393
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/03(日) 11:13:01 ID:Iv5.g6BY
団長「外部調査だけでは、はっきりしたことは申し上げられません。やはり、内部調査が必要だと思います」

王様「そうか。バロックの国王に協力を要請し、強力な魔道師を含む部隊を編成して向かわせよう。下がってよいぞ」

団長「はっ!」

大臣「王様、結界が張られているとなれば、女神の加護がある者でなければ入ることは叶わないのではないでしょうか」

王様「分かっておる。第二調査団と並行して、神託を賜わる術式の準備も進めよ」

大臣「かしこまりました」

王様「ところで大臣、何のために白夜の光を集めるのだろうか」

大臣「私には分かりかねます」

王様「以前、勇者が神の遺産を持ってきたであろう。世界をドーナツ状にするという話、本当に計画している者がいるのかもしれんな――」


394
以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/03(日) 11:22:49 ID:Iv5.g6BY
第7話 おわり

(だまし絵)
"Message d'amour des dauphins"

・メビウスの輪
・クラインの壷

(知恵の輪)
・パズルリング

(確率)
モンティ・ホール問題


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